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宿泊・レンタカー割引、経営相談… 移住「特典」で後押し 会員制度が好調 地方回帰 追い風に

  自治体がつくる、移住希望者向け会員制度が好評だ。ホテル、レンタカー代割引といった特典が移住者の背中を押す。昨年末に設けた鹿児島市は想定以上の約120人が3カ月で登録。宮崎県では事業を利用して450人が移住を果たした。2021年度から新設する自治体も相次ぐ。専門家は好調の背景に新型コロナウイルス禍で高まる地方回帰を指摘する。(細田勇治、三宅映未)

 鹿児島市の「かごしま市IJU倶楽部(いじゅうくらぶ)」には①宿泊・食事代割引②レンタカー代20%オフ③不動産業者の手数料割引──が並ぶ。移住希望者が仕事・住まい探しで市内を訪ねたり、引っ越したりする際の負担を軽くする。業者が用意した内容を市がメニュー化した。実際に住めば、市は「移住奨励金」も支払う。交通費や家具の運搬費などの2分の1(1世帯最大20万円)を助成する。

 11月末から受け付けた。登録者の7割が首都圏在住。30、40代の子育て世帯が過半だった。地元出身のUターン組が6割を占めるという。

 同種の会員制に九州でいち早く乗り出したのは長崎県だ。15年に着手。情報発信に加え、移住後の経営相談や共用オフィスの活用など支援は幅広い。20年末までに累計1553組(2940人)が会員になった。

 農家も誕生している。同県大村市で20年に就農し、トマトを13アール栽培する溝口永幸さん(51)は、東京都からの移住時に支援を受けた。引っ越し代補助や不動産の紹介サービスを活用。「移住情報の提供など暮らしのサポートもあるのはありがたかった」と話す。

 宮崎県では17年2月から会員制度を運用。21年2月10日時点で延べ2382人が登録する。このうち451人が移住した。北海道、熊本県は21年度に制度を新設。移住の呼び水にしたい考えだ。

 活況の背景には、新型コロナ禍で加速する地方回帰の流れがある。鹿児島市は2021年度、市への転入者(約2万人)のうち、市に相談したり支援を受けたりした数が63人となり、20年度(22人)から大きく伸びた。年間目標(50人)も初めて達成。「新型コロナ禍で、都会よりも地方暮らしの方が安心だという層が増えた」(市移住推進室)。宮崎県の会員登録は20年度、移住イベントが開けなくても前年と大差ない水準だった。

 移住支援に詳しい、九州大学大学院法学研究院の嶋田暁文教授は「移住がコロナ禍で熱を帯びる中、会員制の支援は希望者に最後の後押しをする仕組みだ」と認める。一方で、取り組みが各地で増えると、サービスや「お得感」を競いがちになるとも懸念。「移り住む土地で何ができるのか、地域とどんな『関わりしろ』(地域とつながる部分)が想定できるか、情報の提供が必要だ」と訴える。