就農を知る

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[未来人材プラス] 滋味豊かジビエ弁当 キッチンカーで販売 地元に魅力広めたい 長野県中川村 高橋詩織さん(33)

「ジビエ(野生鳥獣の肉)を身近な存在にしたい」。長野県中川村の高橋詩織さん(33)は、ジビエ料理を通じて地域の自然や食の魅力を発信する。キッチンカーでイベントにも参加し、消費の裾野を広げている。

隣の松川町生まれ。東京の大学を卒業、都内のアウトドアメーカーに勤めた。だが、満員電車に耐えられず、1年しないうちに退職。夏は南アルプスの山小屋、冬は白馬村のスキー場などで働き始めた。「自然が身近な環境で暮らしたかった」

ジビエの魅力に目覚めたのは山小屋で働いていた時。近くの猟師から分けてもらった鹿肉を食べたことが転機だ。「すごくおいしかった。自然と食が結び付く姿が格好よく、今の活動の原点になった」と振り返る。

ジビエとの関わりを模索する中、2016年に中川村の地域おこし協力隊に着任。同年に取得したわな免許が、地域に溶け込む手段になった。

協力隊の任務は解体や加工業務だ。ジビエの多くがレストランなど飲食店で使われる一方、村の身近な場所で消費されていないと感じた。「地元の人ほどジビエが苦手。おいしい食べ方を伝えれば消費が生まれてブランドになり、地域を元気にできると思った」と話す。

協力隊任期中の17年に「ヤマドリ食堂」という看板を掲げ、中川村を拠点にイベントなどでジビエの提供を開始。任期後の20年にキッチンカーを導入した。村内外で週1回ほどジビエを使った弁当を販売。野菜は村や周辺で栽培されたものを使い、地域の魅力を伝える。

村営住宅で暮らし、自家用の野菜を栽培。仲良くなり、農産物をもらうことも多い。「収入が少なくても陽気でいられる」。保育園児に向けて、鹿肉の解体実演も始めた。畑や田を荒らす獣害が増える背景や、命を考える機会を提供する。「命を無駄にしたくない。子どものうちにジビエに触れさせて、理解につなげたい」と期待する。