新規就農者

[未来人材プラス]イチゴ核に多角経営 就農の経緯漫画に 迷っている人を応援 長野県佐久市 井上隆太朗さん

 長野県佐久市の井上隆太朗さん(29)は、13アール4連棟のハウスでイチゴ6品種9800株を栽培する。この冬他界した祖父の名前を冠する「井上寅雄農園」。受け継いだ農地で、農業に生きる覚悟がにじむ。就農から1年。観光イチゴ園開設や、6次産業化商品「イチ氷」の販売、農業初心者とベテラン農家のマッチングサイト「アグティー」の運営など多角的な経営を展開する。

 経営の中心は、2020年12月にオープンした観光イチゴ園。21年6月下旬まで開き、来園者数は3700人。新型コロナウイルス下だったが近場の需要を捉え、体験・レジャーのチケット予約サイト「asoview!」で、週間ランキング全国2位を記録した。

 就農・開業から21年6月までの1年間で、1000万円ほどを売り上げた。現在は規模を拡大。ハウス3棟30アールを建設中で、22年3月に完成する。従業員も4月から4人増やし、現在6人を雇用する。冷凍イチゴをかき氷状にした「イチ氷」のキッチンカーでの販売も加え、増えた従業員の仕事と夏場の収入を確保。周年雇用を目指す。

 大学生当時、祖父母の農園の経営を知り驚いた。売り上げは約200万円。「衝撃だった」。経費を差し引くと手元に利益は、ほぼ残らない。「これでは食べていけない。本格的に経営を学ぶ必要がある」と感じた。

 大学卒業後、日本農業経営大学校へ。「施設園芸の可能性」を学んだ。天候に左右されず、一定の収量と売り上げが見込める。「製造業にも似たビジネスモデルが魅力だった」と振り返る。

 その後、オランダで1年半、大規模施設園芸を研修。帰国後、県内の中小企業に就職した。新規事業立ち上げでイチゴ栽培に苦労した経験が後に、アグティー運営に生きた。覚悟を示すため、インターネット上で就農までの歩みを漫画で紹介。「迷っている人の背中を押したい」

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