新規就農者

[未来人材プラス]通訳で茶PR 魅力発見産地巡り就農決意 農家の思いを言葉に 佐賀県嬉野市 松田二郎さん(28)

 佐賀県嬉野市の茶農家・松田二郎さん(28)は、大学時代に通訳として茶のPRに関わったことを機に茶業界に飛び込んだ。全国の茶産地を巡った上で「うれしの茶」にほれ込み、2020年に独立。生産の傍ら9月には茶を提供するバーを市内に開業した。「農家の思いを直接、消費者に届けたい」と奔走する。

 松田さんは長崎県佐世保市出身。大学時代はカフェ経営を目指し、ニュージーランドに留学した。茶の魅力に目覚めたのは帰国後、嬉野市で外国人に茶をPRする企画に通訳で関わったことがきっかけ。外国人からも注目を集める独自の茶文化に「茶は面白く世界に通用する」と確信した。

 業界を知るため、収穫の手伝いなどをしながら全国の茶産地を巡った。作業の大変さや農家減少など茶産地が抱える課題を知るにつれ「自ら栽培しないと、茶の魅力を伝える言葉が薄っぺらくなる」と就農を決意した。

 23歳で同市に移住した。ここを選んだのは、全国の産地を巡る中で「うれしの茶が最もストイック(厳格)だった」からだ。精揉(せいじゅう)工程を挟まず乾燥させる茶種では茶葉の見た目を良くする、若い芽を使う。収量を下げても品質へのこだわりを貫く姿勢にほれた。

 知り合いを通じ、同市の茶農家「副島園」で学んだ。20年に茶園10アールを借りて独立。初期投資がかかる専用機は、副島園の作業を手伝う代わりに共同利用させてもらった。

 だが、8月の豪雨で市内の茶園が崩落するなどの被害が発生。松田さんの茶園は被害を免れたが、産地の苦境に「復旧作業で(自分たち)若い力を使ってほしい」とひとごとではいられない。

 「農家の思いを自分の言葉で伝えたい」。9月中旬に市内で開いた茶を提供するバーでは、自ら店頭に立つ。この他にも動画投稿サイト「ユーチューブ」で、栽培の様子などを公開。若い世代に茶の魅力を発信する。

松田さんが活用した農水省の農業次世代人材投資資金の詳細はこちら