新規就農者

[未来人材プラス]高校中退後、父と農作業レンコン8年目で独立 技術のバトンを継承 広島県東広島市 大谷真志さん(23)

 広島県東広島市の大谷真志さん(23)は、父・浩志さん(50)の下で15歳からレンコンを栽培する。8年間経験を積み、今年1月に独立を果たした。父と、父の師匠が築いたブランド「志和レンコン」の担い手として活躍する。地元への貢献と、受け継いだ技術を途切れさせないため奮闘する日々だ。

 同市西条町出身。小さい頃から米作りを手伝うなど農業は身近だった。地元の高校を中退後、レンコン栽培を始めた。父と栽培歴40年を超える父の師匠から栽培を学んだ。「最初は言われたことをやるだけで、つらかった」と振り返る。

 手作業の多いレンコン栽培は、苦労が絶えない。経験を積むうち、独立への思いが強まった。農地や収穫などに使う作業機を父から譲り受けて独立した。

 23歳と若いが、ベテランとして作業計画を立てる。「一人で1日1アール収穫できる。1カ月30アールなら、8カ月で240アール」と大谷さん。1・7ヘクタールで独立して2・2ヘクタールまで規模を拡大した。4月上旬に種レンコンを植え、8月の盆明けに早生品種から出荷を始める。翌年3月中旬まで30トンを県内の市場に出荷する計画だ。

 時間が空けば、近所の草刈りなども請け負う。大谷さんは「今も助けてもらっている。世話になった人や地域に恩返ししたい」と語る。

 昨年春、新型コロナウイルス禍で引きこもりがちな高校生の職業体験を、JA広島中央の紹介で父が受け入れた。そこで知り合った高校生が、週末になると大谷さんの作業を手伝う。農業に興味を持つ若者の存在がうれしく、楽しく、頼もしく、良いレンコンを作る原動力になっている。

 雇用も視野に、さらに規模拡大を目指している。「農業は頑張った分、返ってくる。若い人に農業の楽しさを知ってもらい、栽培技術を次世代へつないでいきたい」