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[未来人材プラス]イノシシ肉全国へ 県内唯一の牧場継承 強みは通年出荷と味 青森県今別町 依田啓夢さん(26)

 青森県今別町の依田啓夢さん(26)は、県内唯一のイノシシ牧場を経営する。山梨から県内の大学へ進学し移住を決意。繁殖と肥育両方を手掛け、牧場を前経営者から継承し増頭にも成功した。「お肉のニュージャンル」をコンセプトに、イノシシ肉の味覚を全国に広め販路拡大を目指す。

 山梨県笛吹市の出身。青森県内の大学へ進学し組織論を学んだ。北海道新幹線開通で奥津軽いまべつ駅が開設された町の振興にゼミで関わるようになった。牧場経営者とはこの時に知り合った。

 町の人口は2449人(2021年8月末)。高齢化で人口減が進む。就職活動もしたが「活動で知り合った人が元気なうちに」と、大学卒業後の移住を決意した。

 17年に移住。後に経営継承する「奥津軽いのしし牧場」でアルバイトを始めた。経営者から高齢を理由に持ちかけられ、移住1年で継承した。

 現在、繁殖と肥育の計90頭を飼育する。継承当初は30頭ほど。生まれた直後のイノシシの死亡率で最も高い下痢を抑えることに注力。母イノシシと信頼関係を高め、暴れた際に子が死ぬ事故を防ぎ、生後半年以内の生存率を高めた。21年に入ってからの生存率はほぼ100%という。

 19年に隣の外ケ浜町に移住していた県内出身のデザイナー・絵里さん(40)と移住者同士で結婚。絵里さんはパンフレット製作だけでなく、牧場の作業も手伝うなど依田さんの経営を支える。

 依田さんのイノシシは、季節を問わず出荷できることが強み。ジビエ(野生鳥獣の肉)のイノシシは、夏場に味が落ちる傾向がある。だが依田さんは餌に抗生物質を使わず、大麦を配合した100%植物性飼料と、リンゴなど県産青果を使用。出荷する飲食店は「味の個体差が少ない」と評価する。依田さんは「イノシシ肉のおいしさを全国の人に知ってもらい、鍋以外の食べ方も伝えたい」と販路開拓に意欲的だ。

青森県東青地域各市町村の移住・定住支援情報も掲載している「すき。-Aomori Tosei-」はこちら