新規就農者

[未来人材プラス]歴史ある“桃源郷”守る 「自分の裁量」が魅力 JA部会研修で就農へ 和歌山県紀の川市・牧野瑞貴さん(30)

 西日本最大級の桃産地・和歌山県紀の川市。辺り一面に桃畑が広がる光景は「一目十万本」と称される。そんな一大産地で今秋、桃農家として一歩を踏み出すのが大阪府出身の牧野瑞貴さん(30)だ。地元JAの生産部会が手がける就農研修で栽培技術を身に付け、就農にこぎ着けた。

 大阪府枚方市出身。実家は農家ではない。医療系の専門学校を卒業後、地元を離れ、高齢者住宅の営業職などに就いた。ただ、「他人に縛られる会社勤めではなく、自分の裁量で取り組める仕事に就きたいという思いがずっとあった」と話す。

 転機は、和歌山県出身の友人との何気ない会話だった。「あら川の桃」のブランドで知られる、同県のJA紀の里あら川の桃部会が取り組む就農研修の存在を知った。「それまでの人生で和歌山との接点はなかったが、下見で訪れると皆が温かく迎えてくれた。ここでやってみようという気持ちになった」。27歳で紀の川市に移住した。

 研修は、部会員が3人一組で就農希望者を2年間受け入れ、栽培技術や農業経営を伝授する。作業は1日8時間、週3日ほど。研修期間中は国の農業次世代人材投資資金(準備型)を利用し、年150万円の交付金を生活費に充てる。

 牧野さんは、中浴泉さん(64)ら3人の農家の下で桃作りを学ぶ。中浴さんは「私も実家が農家ではなく、地域に支えられた。農業を目指す若者を応援したい。(牧野さんは)作業ののみ込みが早く優秀だ」と評価する。

 今秋にも50アールの農地を借りて新規就農する。農地は中浴さんが準備してくれる。現在、新植2年目の農地で、今後5年ほどで年5万個(売上高500万円相当)を収穫できるようになるという。

 「本当にいい人たちに恵まれてありがたい。歴史ある産地を守れるように頑張りたい」。“桃源郷”に魅せられた若者が船出を迎える。

牧野さんが就農した紀の川市の新規就農者向け情報サイトはこちら