新規就農者

新規就農者

[未来人材プラス]素人から経験積む 集落営農の後継者に 故郷の農地つなげる 石川県津幡町 山田慧さん(35)

 石川県津幡町の山田慧さん(35)は同町でUターン就農し、“次世代”のいなかった集落営農法人の後継者として汗を流す。農業は全くの素人だったが、就農を支援する地元JAの子会社で事前に経験を積むことで、スムーズに就農することができた。「地域で代々受け継がれてきた農地を次代につなげたい」。農業の未来を切り開こうと突き進む。

 高校卒業と同時に地元を離れ、神奈川県内の自動車工場に就職した。水田地帯で生まれ育ったが「農業との接点は、母方の祖父母が町内で米作りをしている程度だった。当時は農作業の経験もほとんどなかった」。

 転機は21歳の時。工場の閉鎖に伴い離職した。いくつかの職を経験すること数年、飲食業に携わり、食を供給する「農」に魅力を感じた。地元を離れて10年を前に帰郷を考えていたこともあり、就農を決意した。

 27歳で同町に帰り、JA石川かほくの就農支援制度を利用した。JA子会社の農業生産法人で3年間働き、水田農業の基礎を学んだ。「農業の知識や技術が一通り身に付き、スムーズに就農できた」と振り返る。

 “卒業”後は、同町竹橋地区の集落営農法人・竹橋営農組合の門をたたいた。同地区には母の実家があり、祖父母がかつて米作りを営んだ農地も同組合が管理していた。加藤紘組合長は「レンコンや大麦、ソバを任せており、真面目に頑張っている。今後も成長していってほしい」と話す。

 同組合では、農地28ヘクタールを管理する。主食用米12ヘクタールの他、残る16ヘクタールで大麦やソバ、レンコンを生産する。米の需給環境に左右されない経営に向け「米からの脱却」を進める。大麦とソバの導入は、JAで栽培技術を学んだ山田さんが主導した。

 近年、全国の集落営農組織では後継者の確保が喫緊の課題だ。「地域の農業を次代につなげるよう精いっぱい頑張りたい」と、力を込める。