新規就農者

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[未来人材プラス]アンスリウム品質追求 地域の魅力発信も 花き栽培 復興の力に 福島県川俣町・谷口豪樹さん(34)

 福島県川俣町の山木屋地区でアンスリウムを施設栽培する谷口豪樹さん(34)は、花き栽培を通じて町の農業復興に情熱を注ぐ。東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い一時、避難を余儀なくされた町の活気を取り戻すため、「復興の花」としてアンスリウムを中心に魅力を発信し続ける。

 埼玉県出身。2013年、会社員として福島市に赴任したことがきっかとなり、同地区出身の範子さん(37)と出会った。15年に結婚。町が復興に向けて、古着などを再利用したポリエステル培地による、アンスリウムの施設栽培を進めていることを知り「復興の力添えをしたい」と決意、18年に就農した。

 ポリエステル培地を使った栽培は、近畿大学が開発した。土を使わないため、原発事故後の「風評被害」を防ぐことができ、同じ培地を繰り返し使えるなどメリットが多い。

 就農当初、農業は未経験だった。長年、同地区で小菊を栽培してきた義父や、同大学などの協力を得て技術を学んだ。当初、生育させるだけで手いっぱいだったが、慣れるにつれて「一株ずつ表情が異なるのが魅力に感じてきた」と語る。冬場は氷点下に下がることも珍しくない川俣町で熱帯植物のアンスリウムを栽培するため、遠隔でハウスの状況を確認できる機器を導入するなど、より高品質な花作りに向けて研究を続けている。

 谷口さんが現在、力を注いでいるのは、花を通じた地区の魅力発信だ。震災後に放置されていたハウスを観光農園として再整備。農業体験などを積極的に受け入れ、子どもの遊び場やワークショップ用の体験スペースを設けた。新たな地域産業の創出に向けて県が進める「ふくしま花フェスプロジェクト」にも参加して、情報発信を続ける。

 谷口さんは「アンスリウムを通じ、川俣をさらに元気にしたい。震災復興への感謝をより多くの人に伝えていきたい」と話す。

谷口さんが活用した「農業次世代人材投資資金」の解説サイトはこちら