新規就農者

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[未来人材プラス]家族との時間を励みに 農薬企業経験が強み 少量多品目で拡大 静岡県富士市・山村達也さん(35)

 静岡県富士市の山村達也さん(35)は、農薬メーカー社員から露地野菜農家に転身した。少量多品目を栽培し、直売をメインに販売する。自分の裁量で、家族と過ごす時間を大切にできるという点も、農業の魅力の一つだと実感している。

 山村さんは浜松市出身。大学で米の研究に取り組み、農薬メーカーに就職。営業担当として農家と接する中で「農業は子育てや家族と過ごす時間をつくれる」と聞いたことが、頭に残っていた。

 転機は2018年。仕事で付き合いのあった富士市の農家から、借り手のいない農地があると相談を受けた。富士市には妻の実家がある。毎日が多忙で将来に不安を感じ、「転職するなら農家」と考え就農を決断した。

 栽培品目は、限られた面積で周年で収入が見込める、少量多品目の露地野菜に絞った。JA富士市(現JAふじ伊豆)の提案を受けて、地元量販店の店舗内産直コーナーで販売。現在は品目を集約し、ブロッコリー、ニンジン、ラッカセイを中心に栽培を進めている。

 面積は当初の20アールから1ヘクタールに拡大した。近隣の農家などが精力的に働く山村さんのことを知り、耕作の依頼が次々入るようになったという。

 農作物は、友人と立ち上げた「YAMATARO FARM(ヤマタローファーム)」の名前で販売する。食味に特にこだわり、有機質肥料主体の土づくりや、ストレスをかけない栽培管理を徹底する。前職の経験から、防除は得意分野。作を重ね、徐々に安定生産体系を確立した。

 「今まで支えてもらった人とのつながりを大切にしつつ、次は自分が助ける側になりたい」と山村さん。今後は豊富な農薬知識を生かし、「他の農家にノウハウを伝えていきたい」と展望する。

 週1日は休みを設け、妻や娘と過ごす。販売先の一つは妻の実家のすぐ近く。自分の野菜を見てもらうことが、自身の励みにもなっている。