「楽しく農業をする姿を見せたい」
レタス栽培に懸ける想い

笠原慎矢さん/株式会社ベジアーツ
農園所在地:長野県北佐久郡
就農年数:5年目

楽しく農業をしながら地域を支える

畑で農作業をしていた祖父の姿に憧れ、農業法人株式会社ベジアーツ(長野県北佐久郡)に入社して夢を叶えた笠原慎矢さん。農業法人で仲間と働く楽しさ、地域を支える喜びを噛みしめている。「就農」というと独立して家族で農業をするイメージを持つ人が多いが、今回は雇用就農という農業のあり方を紹介したい。

「農業をやりたいと思ったのは、祖父の影響が大きかったです。畑仕事は辛いことも多いはずなのに、何をやるにもすごく楽しそうで。そんな姿を見て、自分もいつかみんなを笑顔にする野菜を作りたいと思いました」
そこから一切迷うことなく、農業高校から農業大学へ進学。当初の予定から変更したのは、独立して自分の畑を持つのではなく、法人に勤めて農業をすることだった。

「大学時代、職業説明会でベジアーツの山本社長と出会いました。社長は『農業経営者が増えることは農業界とって大事なことかもしれない。でも私は、地域に根づいた農業生産法人で、楽しく農業をやりながら地域を支えることも農業の発展につながると思っているんだ』と話してくれました。1人でマイペースに農業をする姿をイメージしていたのですが、仲間と同じ目標をもってやることで地域や農業を盛り上げることもできるのか、と思い、この会社で働いてみたいと思いました」

農場長というポジション

就農5年目でレタス班農場長として活躍する笠原さん。レタスはハウス栽培がないため、天候に合わせた栽培調整が必要な作物だ。笠原さんが一番好きな野菜でもある。

農場長として特に気をつけていることは、甘味の強さと、鮮度を落とさず出荷することだ。スタッフには農業未経験者もいるので、知識や経験が異なる人たちに理解してもらい、同じ水準で出荷しなければならない。感覚が求められる仕事は、説明する時にも苦労をする。
「例えばレタスの収穫の際、人によってレタスを切る角度にどうしても差が出ます。これくらいの角度で、と言ってもなかなか伝わらないんです……」と苦笑する。
しかし、色々な人がいることの良さもあるという。
「農業以外の知識を教えてもらうこともあります。それらを農業に取り入れることもできますし、自分自身の視野も広くなって、有難いですね」

みんなの働きもあり、ベジアーツ全体が「質の高いおいしい野菜を作りたい」という共通意識を持てている。

地域を支え、支えられる農業者

ベジアーツは、「長く勤めることができる会社を目指す」というスローガンを掲げている。スタッフも、社員や短期アルバイト、インターン生、実習生など、さまざまな形態があり、自分に合ったフェーズから農業を始めることができる仕組みだ。
「僕たちは指示どおりに動くのではなく、ある程度任せてもらっています。周りの力を得ながら考えて試行錯誤していると、自分の成長を実感できますね」
こうした点も、スタッフがモチベーションを維持し、長く働ける秘訣かもしれない。

地域農家との関係性も深い。特に近年は、温暖化の影響や自然災害で従来の栽培方法ではうまくいかないこともある。皆で知恵を絞って地域農業を守らなければならないのだ。
「僕たちベジアーツと地域の農家さんが集まって、曇天が続いた日等、気候に合わせたレタスの生育状況や、新しい事例を紹介し合っています。その場で対処できることを話し合ったり、翌年に生かしたり。支い、支えられていると感じますね」
そう笑う姿は、地域を支える立派な農業者の顔だ。

笠原さんが当初思い描いていた「自分の畑を持つ」スタイルとは異なるが、地域や仲間と協力して良いものを作る充実感、色々な方と共に汗を流す達成感は、雇用就農ならではなのだろう。