販路に加工、女性雇用まで!
アイデアを形にできる農業の楽しさ

西岡さち子さん/西岡産業
農園所在地:徳島県徳島市
就農年数:9年目

東日本大震災と出産を機に地元へ

徳島県徳島市の「西岡産業」は、4代続くイチゴ農家。代表として活躍しているのは娘の西岡さち子さんだ。前職ではITコンサルタントとして忙しい日々を過ごしており、農家を継ぐ気はなかったが、今では直販や加工品まで手がけ、西岡産業を更に大きくさせている。西岡さんの活躍とともに、農業の新たな楽しさや可能性を紹介したい。

西岡さんがUターン就農をするきっかけになったのは、東日本大震災だった。震災直後、都内ではコンビニやスーパーの棚から一時食料が無くなり、始めて食に対する恐怖を感じた。同時期に出産も経験したことで「自分の子どもに安心に作られたものを食べさせたい」と食への関心も芽生えてきた。
地元・徳島県での暮らしと言えば、店には新鮮でおいしい野菜が並び、農家同士が収穫したものをおすそ分けしている。食に危機感を覚えることない、穏やかで豊かな暮らしを思い出した。

父母が紡いできた歴史やノウハウ、イチゴハウスが大きな財産であることを実感した西岡さんは、西岡産業の4代目として就農することを決意した。

販路開拓と加工へのチャレンジ

西岡産業がある勝占(かつら)地区はイチゴの産地として栄えている。ここで収穫されたイチゴは「勝占イチゴ(品種:ゆめのか・さちのか)」と呼ばれ、そのほとんどが市場出荷されていた。
味の評判は良いものの、認知度が足りないことで市場価格が下がり、西岡さんが就農した時は、勝占イチゴの生産者も全盛期の半分以下に減っていた。このままでは、いつか勝占産のイチゴがなくなってしまう。「勝占地区をイチゴの産地として存続させるにはどうしたらいいのか」西岡さんは真剣に考えた。

まずは直接取り引きをしてくれる販売先を開拓することから始めた。西岡さんは、主に関東近郊のオーガニック食品店に栽培記録など、提案資料になりそうなものは全て持っていった。
勝占イチゴが人気になれば市場も買い支えてくれる。そうすれば地域の農家が潤い、みんなの原動力につながるのではと思ったのだ。
ようやく取り扱いにこぎつけ、「勝占イチゴ」は関東圏で販売されることになった。

ジェラートやジャムなどの加工品のオンライン販売もスタート。最初はあくまで栽培優先で、無理のない範囲でおこなっていたが、コロナ禍で需要が増えたという。送料無料で2kgのイチゴをオンラインで販売したところ、注文客が殺到した。

「SNSで『おいしかったよ』とコメントをもらったり、お手紙を頂いたり、孫に贈りたいからと、ご年配の方が購入してくれたり……。お客様から直接反応を受け取れることが励みになりました」
市場出荷では感じられなかった消費者の反応は、栽培や経営に生かす糧となる。
もっと勝占イチゴの販売促進に力をいれようと意気込む西岡さん。今後はドライイチゴやイチゴペーストなどもリリース予定だという。

子育て中の女性を雇用、職場環境も整備

育児をする親として、西岡さんは子育て中の女性雇用にも力を入れている。注力するきっかけとなったのは、西岡さんが地域活動として私設図書館の運営をしていた時だ。

「本の読み聞かせのボランティアを募ったら地域のママさん達が手を挙げてくれたのですが、皆さんとても優秀だったんです。こんなに意欲的なのに、何故仕事をしていないのかと不思議になりました」
聞くと、育児や家庭を理由に急に職場に穴を開けると迷惑がかかるからだという。

西岡さんは、繁忙期と子どもの休みが重なる時は子連れ出勤を可能にするなど、働きやすい環境に整えれば、彼女たちに仕事を手伝ってもらえるのではと思い、すぐにパートスタッフとしてスカウトした。

今では西岡産業に約10名の女性パートスタッフが活躍している。それは、同じ子を持つ親として、西岡さんの支えにもなっているのだ。

常に新しいチャレンジをし続ける西岡さん。その原動力は何なのか。
「自分のアイディアをすぐ行動に移せる点が、農業の楽しいところ。これからもアイデアが出たらチャレンジしていきたいですね。でも、常に根底にあるのは“親が子どもに食べさせたいイチゴを作る”こと。安心安全で、勝占イチゴの良さが伝わるしっかりした味わいあるイチゴを作っていきたいです」

思いを形に出来る仕事。西岡さんの話から、農業の醍醐味を感じた。