2024.03.25

ステップを踏んで夢を実現。
ファーマーズスクールでピーマン栽培学び
夫婦で新規就農

入江 徹さん・祐里子さん
農園所在地:大分県竹田市
就農年数:3年目 2022年就農
生産:ピーマン、白ネギ

新規就農の夢をかなえるため、家族で大分県に移住

阿蘇山やくじゅう連山などの山々に囲まれた自然豊かな大分県竹田市。ここで、ビニールハウスでのピーマン栽培に取り組んでいるのが、入江徹さんと祐里子さん夫妻だ。出身は2人とも福岡県福岡市。竹田市ファーマーズスクールで農業研修を受けたことをきっかけに、2022年に新規就農した。現在は3人の子どもを育てながら、畑仕事に汗を流している。

徹さんは中学生の時に農業に興味を持ち、漠然とながらもいつかは農業を仕事にしたいと考えていた。高校卒業後は農業とは関係のない仕事に就いたが、新規就農の夢をかなえるために25歳の時に退職。個人農家や農業法人などで約5年間働きながら、露地栽培や施設栽培を学んだ。妻の祐里子さんは介護の仕事をしていたが、徹さんの新規就農への思いを聞いて、応援したいと夫婦での就農を決めた。当初は福岡市内で農地を探したが見つからず。ある時、大分県が開催する就農・就業応援フェアに参加したことが、竹田市で就農する契機になった。それまで竹田市には行ったことはなかったが、市のブースで農政課の職員から詳しい説明と熱い誘いを受けて移住と就農を決めた。

「福岡市では農地が見つかりませんでしたが、竹田市には借りられる農地がたくさんありました。私たちの場合、移住が伴う就農でしたが、幸いなことに住まいも見つかりました。地元の方々もウェルカムな雰囲気で、私たち家族を受け入れてくれています」(徹さん)

ファーマーズスクールで2年間の研修。夫婦でピーマン栽培の基礎を学ぶ

徹さんには5年間の農業経験があったが、祐里子さんは未経験。農業の知識と技術を身に付けるべく、2人で竹田市ファーマーズスクールに入校した。同スクールは、新たな農業の担い手の確保策として2010年に開校されたものだ。2年間のカリキュラムで、座学研修や模擬営農などを通して、独立して営農していくために必要な知識や技術を修得する。入江さん夫婦の入校時は、コースはピーマンとトマトの2つで、現在はこれにミニトマトが加わっている。2人が栽培品目にピーマンを選んだのは、トマトに比べて比較的育てやすいと聞いたからだ。1年目は、就農コーチの農地で技術面での指導を受けながら、研修施設では農薬や農業簿記などの栽培や経営に必要な知識を学習。2年目は、就農コーチの指導を受けながらの模擬営農を経験した。

「コーチがマンツーマンで、私のような初心者でも分かるように丁寧に説明してくれます。農地で実際に害虫を見せてくれて、作物にどんな影響を与えるかとか具体的な話を聞けます。農作業は想像した通り力仕事が多く、20キロもある肥料袋を運んだり、炎天下で作業したりと体力的に大変でした。それでも、野菜を一から育てて成長を見守りながら、収穫に至る過程は楽しくやりがいを感じました」(祐里子さん)

野菜は素直でいい子。手をかければちゃんと応えてくれる

2022年3月にスクールを卒業し、4月に就農した。当初は自分たちの畑で栽培を始める予定だったが、地区の基盤整備に時間がかかり、ビニールハウスの建設が作付け時期に間に合わなかった。そこで1年目は、市が運営する貸出用農園「スタートアップファームたけた」で栽培することに。農業に挑戦したい人がお試し感覚で農業を始められる場として大分県が立ち上げた事業で、農地、施設、機械、指導をセットで利用できる。ピーマンの栽培は、4月後半から11月の霜が降りるまでの約半年間。作業のピークは夏の収穫時期。ビニールハウス内の気温は40度くらいまで上がる。夕方に収穫が終わると、今度はへた切り作業。収穫の最盛期には、作業は深夜にまで及ぶ。

「野菜は素直でいい子。手を抜くとひねくれてしまいますが、手をかければちゃんと応えてくれる。毎日ぐんぐんと成長するので、私たちがそれに追い付かないといけません。コーチからは、1反(10アール)当たり10トン収穫できれば立派だと言われました。初年は19アールの栽培面積で17トンの収穫量。目標には及びませんでしたが、まずまずの出来でした」(徹さん)

入江さん夫婦は収穫した全量を農協に出荷している。農協などの市場に出荷するには、形や大きさといった出荷規格を満たす必要があり、農家が価格を決められないなどのデメリットがあるが、安定して出荷できることや包装などの作業が不要なため、農作業に集中できるメリットがある。

現在、入江さん夫婦は農業次世代人材投資資金の支援を受けているが、今年で資金の給付が終わることから、農業経営を安定させていきたいと考えている。そのために昨年から白ネギの栽培を始めた。ピーマンを収穫できない冬場の収入源として、30アールの別の農地を借りて育てている。ピーマンとは収穫時期は重ならないものの、白ネギを植え付けてからの除草作業などの負担は大きい。白ネギの栽培には苦戦していると話すが、就農2年目は自身の農地でピーマンを栽培し、1年目と同じ収穫量を確保できた。

頑張って働いた分だけ売上につながる喜び

農業に取り組みながら3人の子育てもしている入江さん夫婦。すでに2人でできる面積ぎりぎりと話すが、就農3年目の今年から米の栽培も始める。ますます忙しそうだが、勤めている時には得られなかった充実感がある。収穫物を出荷すれば、日々の売上げが通帳に記載されていく。作業が大変でも、自分たちが頑張って働いた分だけ収入につながる喜びがある。また、時間の使い方を自分で決められる良さもある。会社員とは違い、曜日に関係なく仕事があるが、子どもの学校行事がある時などは柔軟に時間を取れるようになった。
取材の最後に今後の展望を聞いた。

「経験を積みながら栽培技術を磨いて、収量と品質を上げていきたいですね。農地を増やし過ぎると手が回らないので、ちょっとずつできることを増やしていけたらと思います」(徹さん)

「長く農業を続けていくためにも、農業経営を軌道に乗せて収入を安定させていきたいです。時間のある時には家族で旅行に行けるくらいの生活に余裕がある状態にできるといいです」(祐里子さん)

就農を考えている人へのメッセージ

「農業は実際にやってみないと分からないことも多いです。いきなり新規就農するよりも、農家で働いたりファーマーズスクールなどで農業を学んだり、途中のステップがあるとよいと思います。また、土地によっても作れる野菜が違うので、その土地の農家がどんな品目を作っているのかを調べた上で、栽培品目選びは慎重に行いましょう。農業を始めるには、高額な農業機械などが必要でお金がかかります。本当に農業を続けていけるのかをよく考えて就農してください」

 

「After 5 オンライン就農セミナー」にて、入江さんをゲストに就農までの経緯やご自身の体験談を語っていただきました。その様子を下記の動画よりご視聴ください。